2016年10月11日火曜日

10月10日 徒弟制度続ける企業から労務管理を考える

福岡・久留米のぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用と労務管理の町医者 吉野正人です。

10月10日 徒弟制度続ける企業から労務管理を考える

10月10日月曜日。3連休の最終日ですが、労務管理・社員教育について、気になる記事がありました。

※NEWS ポストセブンより引用

徒弟制度続ける企業 携帯メール禁止、恋愛発覚で即刻クビ
NEWS ポストセブン 10月10日(月)7時0分配信
最近の企業では厳しい勤務環境となると、すぐに「ブラック」の誹りを受けがちだ。その風潮に真っ向から抗うように、古くからの「徒弟制度」を続けている企業がある。一流の職人を育てるその企業にライター・池田道大氏が迫った。
 * * *
 取材中、社長に促された「丁稚」「職人心得」を暗唱した。
〈1、挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます〉
〈2、連絡・報告・相談のできる人から現場に行かせてもらえます〉
 神奈川県横浜市にある注文家具メーカーの秋山木工。独自の「徒弟制度」で一流の職人を育てる同社の社訓「職人心得30箇条」は、注釈を合わせると読了まで5分ほどかかる。キラキラと目を輝かせた丁稚は、そのすべてを空で覚えていた。

 厳しい指導で知られる秋山木工の秋山利輝社長は、「最近は海外からの注目度が高い」と自信を見せる。

「社員1万人という中国企業の社長が、『カネは儲かるが従業員の育て方がわからない』と見学に来ます。ウチは日本一厳しい会社と言われるけど、僕は日本一優しいと思っている。自分は年に一日も休まず、弟子に付き添っていますよ。“ブラック企業”などと言いたい人は言えばいいけど、弟子をスターにしたい思いは、僕に勝てるはずがない

 秋山木工では、1年間「丁稚見習いコース」を終えると丁稚として正式採用される。入社した丁稚を待つのは過酷な修業の日々だ。

 全寮制で、朝5時に起床して朝食を作り、近所を1.5km走る。好き嫌い厳禁の朝食後は工場や近所を掃除し、8時の朝礼で冒頭の「職人心得30箇条」を全員で唱和して仕事が始まる。

 丁稚の主な業務は荷物運び工場の掃除だ。職人の手助けをしながら、仕事の段取りや技術を目で学ぶ。仕事が終わると夕食を作り、夕食後はレポート作成や自主練習に励み、23時にようやく就寝。休日はなく、修業から解放されるのは盆と正月の10日間のみだ。秋山社長は、「心が一流になれば、必ず技術も一流になる」と断言する。

「厳しくするのは、一流としての基礎づくりに集中するためです。一流の職人になるには“一生懸命”や“頑張る”というレベルでは足りず、“本気”で取り組む必要がある。技術は練習すれば誰でもできるようになるけど、人を思いやり、感謝する心は直に教えないと学べない。心を磨くには徒弟制度が一番なんです」

 心が技術を育てるのであり、その逆ではない。そう信じる秋山社長は、丁稚の心を磨くため、丁稚には以下の厳格なルールを課している。

・名前や出身地はもちろん、8年後の自分の姿や将来の目標まで、自己紹介が完璧にできないと入社できない。
・入社後は丸坊主。女性の丁稚も1年目は丸刈りで過ごす。
携帯電話やメールは禁止で連絡手段は手紙のみ
・家族と会えるのは盆・正月の帰省時のみ。
・親からの仕送りや小遣いは許さない。
・プライベートを完全に捨てて修業に専念するため、恋愛が発覚したら即刻クビ。

※引用終わり。

この記事なっている有限会社秋山木工という会社を調べてみると、昔から記事のような「現代の丁稚制度」と呼ばれる独特な社員研修制度を行っているようです。記事では不明な点を、有限会社秋山木工さんのホームページ、インタビュー動画、他の特集記事等を確認した点を下記の通り列挙してみます。

・ホームページにおいて、企業理念・社長の考えは詳しくしっかり明示されている。

社員教育についても、社員ホームページにも「職人研修制度の課程」で詳しく説明されている。

・1年目は学校、2年目~5年目までが丁稚、6年目〜8年目は職人と、全てで8年制度の職人研修制度を行っている。

職人研修制度の課程によると、まずは秋山学校で学生として1年間の丁稚見習いコースで学ぶようで、この1年間は労働者ではない。この1年間で入社するか否かしっかり選別が行われ、卒業後は労使合意で丁稚として入社する。

・秋山学校を卒業後、秋山木工に丁稚として正式採用され、入社するので雇用関係はあり労働者である。入社後4年間(秋山学校入学後2年目~5年目)は、丁稚として記事のような労働と私生活を送る。

・寮生活を確認すると、食事作りも従業員が行っており、朝4時半起床寝るのは夜11時と厳しい。朝6時には朝食の前に1.5キロのマラソンを行う。夜の11時まで休みは無い。そのほか入寮10日以内に男女とも丸坊主にされ、恋愛禁止・携帯電話禁止である。まともな休み盆と正月のみであり、それ以外は家族との面会・電話は許されず、手紙のみが可能。

・秋山学校入学後6年目~8年目は、職人として能力給(請負)での仕事になるため実力次第で高給優遇。

・秋山学校入学後9年目以降は、独立等本人の意思に任せる。

以上のような記載を確認しました。

ある意味、しっかりした企業理念・教育体制を確立していると思います。また社長のインタビューなどを確認したところ、「労働者は財産である」という考えは持っているように思われます。

また採用に関しては、しっかり1回の面接時間は3時間かけ、採用基準も「面接中に一切反論しないこと。」「感謝の心を持っているか。」の2点をもとに、じっくりやってるようです。また親を交えて三者面談を行い、実技試験も行う場合もあるようです。

ある意味、「プロの職人」を育てるべく真剣に時間をかけて育て、従業員を財産にするよう頑張っている点では、非常に高い評価ができると思います。

しかし、法改正を繰り返す労働諸法令等「時代の流れ」を理解せず、マスコミの取材を受けている点は非常に問題だと思います。

また、経営者として一流の職人を育てる「熱き思い」は共感しますが、経営者として事業継続に必要な法令順守を理解していない(または、知ってても守ろうとしない)点が非常に問題であると私は思います。

昔の日本ならば、記事のような徒弟制度・丁稚奉公は有意義であり、職人としての伝統技術は継承され、日本の技術面の良さが保てたと思います。しかし、戦後~高度経済成長~バブル崩壊~ネット社会到来と大きな変化をしてきた状況で、会社の社内教育・労務管理も柔軟に対応する必要があると思います。

そして現在の中小企業においては、法令遵守は必須であると思います。職人としての「伝統」を守る正当な理由があっても、記事のような公然と法違反をするのは、日本の企業ではまずいと思います。

法違反を記事から私なりに列挙してみると、労働基準法関係だと、32条(労働時間)、34条(休憩)、35条(休日)、36条(時間外及び休日の労働)、37条(割増賃金)、69条(徒弟の弊害排除)等と多く該当すると思われます。また給料月11万円(手取りでしょうか?)のような記載も見かけられる点から、最低賃金法違反も可能性があります。

ただ採用の仕方、その後の教育に関して厳しい反面、手厚く行っている点から、「通常の」労使関係では信頼関係を構築されていると思われます。

また、学校入学時や入社時等に多くの誓約書・労働契約書等交わしてると思われます。今までは、トラブルが発生ししても、労働基準監督署や労働者側弁護士、ユニオン等に駆け込んだり・相談した事例が少なかったと思われます。

しかしネット社会の現在、今回の記事でtwitter・facebook等ネットで炎上している点でも、企業としてのイメージは採用・本業面にも影響する可能性があると思います。

今後、企業の継続性」を考えるならば、教育の「伝統」は守りながら、「時代の変化」を把握の上で法令遵守し、柔軟に対応した教育・労務管理は出来ると思います。

以上の点でも、今回の記事を反面教師に、私を含む社会保険労務士に相談しながら、教育・採用の仕方の見直しをして頂ければ幸いです。

※写真は今日の夕食で、鰆の西京焼き・イカ大根・野菜のかき揚げ・鰯の刺身等です。

以上、福岡・久留米ぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用・労務管理・労働トラブル対応の町医者 吉野でした。

※お問い合わせや相談したい時は、いつでも下記へ連絡願います。 福岡 久留米 採用と労務管理、労働トラブル対応の町医者 社会保険労務士 吉野正人 移動オフィス 090-2852-9529 (すぐつながります。)
メールアドレス naitya2000@gmail.com

ただし労働者側の相談も可能ですが、当事務所は会社側の相談が得意ですので、ご了承願います。 なお労働者の相談は、下記リンクの社会保険労務士をオススメします。








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