2016年11月28日月曜日

11月28日 定額残業代の新聞記事から考えこと

福岡・久留米のぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用と労務管理の町医者 吉野正人です。

11月28日 定額残業代の新聞記事から考えること

11月28日月曜日。今日は、過労死と定額残業代に関する気になる記事がありました。

※毎日新聞より引用

<長時間労働>過労死につながる「定額残業代」とは
毎日新聞 11/28(月) 9:30配信

 「定額残業代」という制度があります。毎月一定時間の残業が発生することを前提に、その時間分の残業代を固定給で支払うのですが、この制度が長時間残業の温床となっているケースが見られます。特定社会保険労務士の井寄奈美先生が、事例をもとに解説します。

 ◇みなし残業時間を過労死ラインに設定する例も
 少し前の判例ですが、新入社員の居酒屋店長が、過重労働による心疾患で死亡した大庄事件(大阪高裁、2011年5月25日判決)があります。大庄は「日本海庄や」などを展開する外食チェーンです。新入社員の月給19万4500円のうち7万1300円が、「役割給」の名目で支払われる80時間分の定額残業代でした。

 過労死ラインとされる毎月80時間の残業を前提とした賃金設計と、月平均112時間と認定された長時間残業を放置していたことで、会社だけではなく代表者と人事担当役員らの会社法上の責任、不法行為責任も認められました。遺族に7680万円を支払うよう命じる判決が下されています。

 通常、会社が社員を雇う時は、所定労働時間分の給料額を示します。残業代は、残業時間に応じて別途計算して支払うのが原則です。会社は社員に残業させると金銭的負担が増えます。この負担を強いることで長時間労働を抑制するのが、本来の法律の意図です。

 ところが、定額残業代を導入する会社では、社員が一定時間まで残業しようがしまいが毎月の支払額は変わりません。「一定時間」(みなし残業時間)過労死ライン80~100時間に設定し、長時間労働を放置しているケースが見受けられます。また、「一定時間」をある程度に抑えていても、社員の労働意欲をそいでしまう場合もあります。

 こうした会社では、固定された給与の総額を単純に基本給と残業代に分けて、「給与総額の中に残業代も含まれる」と社員に説明するケースがあります。すると、例えば正社員とアルバイトとの時間給が逆転してしまうことがあります。ある小売りチェーンで実際にこれが起こった事例を紹介します。

 ◇バイトから登用されて時給が減った正社員のケース
 小売りチェーン店でアルバイト勤務をしていたAさんは、当初時間給950円で雇用されました。1年ほどまじめに勤務したことが認められて時間給は1100円に上がりました。

 Aさんは残業も積極的にこなし、アルバイトながら月に200時間も働くことがありました。その月は、おおよそ30時間分の割増残業代が支払われ、給料が23万円ほどになることもありました。

 そんなAさんに会社は正社員への転換を打診しました。月給は24万円。ただし月給には50時間分の残業代が含まれていました。フリーターが長かったAさんは、20代後半になって家族からも定職に就くよううるさく言われていたので、会社の打診を受け入れることにしました。

 Aさんが社員になって初の給料日。給与明細には「基本給17万5000円、固定残業代6万5000円」と記されていました。アルバイトのときよりも残業をいとわず働いたのですが、それでも給料は毎月固定です。

 数カ月が経過し、明らかに毎月の労働時間が長くなっているのに給料が増えていないと感じたAさんは、経理職の姉に給与明細を見せて相談しました。すると、時間給がアルバイトのときよりも下がっていることがわかったのです。正社員としての時間給は1030円でした。

 ◇アルバイトより低い時給に判然としない思い
 Aさんはアルバイトの同僚に正社員になったことを自慢げに話しており、仕事帰りの食事で自分が多めに支払うなどしていました。しかし、実は時間給はアルバイトの方が高いことがわかり、ぼうぜんとしたそうです。

 もちろん、正社員のメリットもありました。賞与が支給されたり、給料額が安定し生活設計がしやすかったり、家族が喜んでくれたりしたことなどです。ただ、Aさんは「アルバイトより時間給が低い正社員ってどうなんだ?」と、どうも判然としない思いを抱えるようになりました。

 これまで積極的に引き受けていた残業もできるだけ避けるようになりました。残業しなくても給料は同じだからです。仕事にも興味が薄れてやる気もなくなってしまったそうです。そうしたAさんの変化に会社側も困っています。

 「定額残業代」の制度自体が悪いわけではありません。社員側は、残業をしてもしなくても一定額を得られます。業務を効率化して早く仕事を切り上げようという意識も働くでしょう。ただ、業種職種によっては、この制度が長時間労働の温床となったり、社員のやる気をそぐリスクがあったりすることも、考えておく必要があります。

※引用終わり。

本も出版されている大阪の有名な社会保険労務士である井寄先生による記事です。さすが井寄先生らしく、わかりやすい解説だと思います。私自身、この記事から、労働条件変更における定額残業手当導入に関する注意点と私の考えを書きたいと思います。

いわゆる定額残業手当(固定残業手当)は、事前に1月当りの残業手当を例えば30時間分と決めて支払う方法です。この定額残業手当を在職中の従業員へ導入する場合、下記のような元々の給料を下記のように総額はそのままで内訳を見直す事例が多かったりします。

(旧給料)
基本給180,000円 皆勤手当10,000円 家族手当10,000円 合計200,000円
1時間当りの残業手当1,373円(1時間当りの賃金×1.25)

(新給料)
基本給146,000円、定額残業手当(30時間分)34,000円 皆勤手当10,000円    家族手当10,000円 合計200,000円
1時間当りの残業手当1,127円(1時間当りの賃金×1.25)
※旧給料・新給料共に1月当りの所定労働時間173時間と仮定して計算。

いわゆる1時間当たりの労働単価・残業手当単価が安くなる分、会社には有利ですが労働者には不利益な変更となります。単純に、総額は同額内訳だけを変更すると、従業員のやる気がそがれ、同意を取らずに行うと労働トラブルになりかねません。

これは労働契約法第8条(労働契約の内容の変更)労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件変更することができる。」に該当します。

また、労働契約法第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)使用者は、労働者と合意することなく、就業規則変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」により、就業規則変更だけでは駄目です。

導入するには、「不利益変更」となるので、就業規則を改訂し賃金を変更する全従業員に対し、労働契約書等を合意のうえ交わす必要があります。そして、給料支払い時には給与明細にて基本給や各手当とは別に、「定額残業手当(○時間分)」と別に明示する必要があります。

また、定額残業時間で決めた残業時間より実際の残業時間が超えた場合は、超えた分の残業手当を計算し、支払う必要があります。

また、定額残業手当方式は、下記のとおり「なじむ職種」と「なじまない職種」があるので、使い分ける必要があります。

 (なじむ職種)
・ 飲食店の店長  ・管理職(管理監督者は除く) ・営業マン ・配達配送 
・システムエンジニア ・企画 ・編集 ・設計 ・デザインなど

 (なじまない職種)
・製造業、建設業の現場作業 ・事務職(補助的な仕事)・トラックやタクシー、バスのドライバー ・時給制のパートタイマー  ・コック、板前 など

最近、営業手当等に定額残業分が含んでいるというあいまいな表現定額残業手当と表現しているのに、毎月定額残業金額が変わり残業時間何時間分なのかわからないケースが見られます。最近の裁判判決事例でも、以上の点が曖昧だと会社側は非常に不利となるのが現状です。

基本的に定額残業手当がいくらで何時間分なのか第三者から見てわかるようにしておく事がトラブルを防ぐ最良の策となります。

※写真は今日の夕食で、自家製タコライスとおでん等です。

以上、福岡・久留米ぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用・労務管理・労働トラブル対応の町医者 吉野でした。

※お問い合わせや相談したい時は、いつでも下記へ連絡願います。 福岡 久留米 採用と労務管理、労働トラブル対応の町医者 社会保険労務士 吉野正人 移動オフィス 090-2852-9529 (すぐつながります。)
メールアドレス naitya2000@gmail.com

ただし労働者側の相談も可能ですが、当事務所は会社側の相談が得意ですので、ご了承願います。 なお労働者の相談は、下記リンクの社会保険労務士をオススメします。









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