2017年6月13日火曜日

6月13日 求人詐欺に画期的判決 求人票と異なる契約を結ばされても無効にの記事より

福岡・久留米のぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用と労務管理の町医者 吉野正人です。
 
6月13日 求人詐欺に画期的判決 求人票と異なる契約を結ばされても無効にの記事より

6月13日火曜日。今日は、求人詐欺と言う内容について気になる記事がありました。

※yahooニュースより引用

求人詐欺に画期的判決 求人票と異なる契約を結ばされても無効に
yahooニュース 今野晴貴  | NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
6/7(水) 11:51
5月の給料日を迎えて、4月分の給与明細を初めて受け取り、自分の賃金などの労働条件が募集要項や面接時の説明と異なっている「求人詐欺」に気づいて困惑している人も多いのではないだろうか。

実際に、私たちに寄せられる労働相談には、「求人詐欺」が後を絶たない。たとえば、求人段階では「基本給20万円」と示されていたのに、残業したのに20万円しか振り込まれておらず、もらった給与明細を見ると「基本給16万円+固定残業代4万円」だった、あるいは求人票と業務内容が全く異なっていた、無期雇用のはずが有期雇用だった、などといったケースだ。

中でも悪質な手法は、入社後に募集要項とは異なる契約書にサインを迫るというもの。すでに入社してしまっている中で、「これにサインして」と言われても、なかなか拒むことはできないだろう。

これまでは、もし求人と異なる雇用契約書を結ばされてしまった場合、それが「契約書」として有効になってしまうと考えられていた。

ところが今年3月30日に、こうした現状に一石を投じる画期的な判決が京都地裁で出され、確定した。本記事では、求人詐欺対策に大きな影響を与えるこの判決の意義を簡単に紹介したい。

無期雇用のはずが、有期雇用の労働契約に署名・捺印させられる
この事件の概要は以下のとおりだ。Aさん(当時64歳)は、ハローワークの求人情報から、社会福祉施設を運営する会社に応募した。求人票には、「正社員」「雇用期間の定めなし」「定年制なし」と記載されていたという。

会社と面談をしたときも、とくに求人情報と異なる条件が示されなかった。その後、最初は短時間勤務で11日間勤務し、ようやく本格的な勤務が開始された。その日の勤務直後、Aさんに「労働条件通知書」が渡された。

この通知書には、求人票と決定的に異なる労働条件の労働条件が示されていた。「契約期間期間の定めあり」(1年間)、「定年制有(満6 5歳)」と記載されていたのである。さらに裏面には「本通知書に記載された労働条件について承諾します。」「本通知書を本日受領しました。」印刷されていた。

会社側はAさんに1通を渡し、もう1通にAさんの署名押印を求めた。Aさんはそこに自筆で署名し、押印し会社側に渡してしまった。A さんは、署名・捺印を拒否すると仕事がなくなり、収入が途絶えてしまうと考えたという。

署名・捺印しても「後出し」の条件変更は無効
では、この契約について京都地裁はどのように判断したのだろうか。

第一に、判決はまず、面談時に求人票記載の労働条件が、労働契約の内容として成立したことを認めた。「これと異なる別段の合意をするなどの特段の事情のない限り、雇用契約の内容となる」として、これまでの判例・通説の立場を踏襲したのである。

第二に、より重要な争点は、労働条件通知書に記載された労働条件への変更についての判断である。判決では、事件の事実経過を吟味したうえで、労働条件通知書への原告の署名押印について、「その自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは認められない」とし、労働条件の変更についての原告の同意がなかったものとした。署名・捺印の事実にもかかわらず、「後出し」での労働契約内容を無効としたのだ。

少し長くなるが、判決の判断理由を引用しよう。

「(労働者の同意の有無について)当該行為を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容などに照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき…(略)…この理は賃金や退職金と同様の重要な労働条件の変更についても妥当する」

「合意」してしまったとしてもあきらめずに相談を
この裁判において、会社側は求人票について、社会保険労務士からの助言を受けて、なるべく多くの人が応募するように作成したと供述しており、裁判所からも「求人票の記載が応募者を誘引するためだけの空虚な記載であったことをあからさまに認め」たものであると指摘されている。

この事件のように悪質な社会保険労務士ブラック士業が、法律の抜け道を「指南」している事例は枚挙にいとまがない。悪質な求人詐欺は、こうした「ブラック社労士」の影響もあり、ますます蔓延しているのが実情だ。

だが、今回の判決で、求人票と異なる労働契約を提示され、署名・捺印してしまったとしても、その内容が成立していないと法的に判断される可能性が明確になった。

この事件を担当した弁護士は「ブラック企業被害対策弁護団」および「日本労働弁護団」に所属する中村和雄弁護士である。また、労働組合(ユニオン)の団体交渉でも、不当な契約の無効について争うことができる(裁判よりはハードルが低いだろう)。

無料相談窓口を記載したので、ぜひ求人詐欺に遭ってしまった人は、合意してしまったとしても、あきらめずに労働相談に訪れてほしい。

※引用終わり。

今回の記事は、マスコミやネットで有名なNPO法人による労働者側の記事です。なお私は、会社側の仕事が多い立場ですが、この記事を批判する気はありません。ただ、この記事で「けしからん」で終わらせるのは、採用・労務管理の「お手伝い」をしている立場として、社労士の立場上「もったいない」と私は思います。

会社が事業継続するには、労働者は財産です。​​​​​​慢性的な人手不足が継続し、ネット社会で以前より簡単に情報比較ができる現状、「子供だまし」「詐欺的な」採用・雇用を繰り返すと、求人を出し続けても来なくなってしまうのが現状であると私は思います。

求人内容と実際の労働内容が違うという労働トラブルは、記事の様な訴訟沙汰を含め、多く発生しています。記事によると、採用後しばらく働かせてから求人内容と違う労働条件通知書を用意し、十分説明せずに署名捺印させたという流れのようです。なお今回の判決は「画期的な判決」とは私は思いません。

今回の記事の判決も、シンガー・ソーイング・メシーン事件-最2小判 昭48・1・19や更正会社三井埠頭事件 東京高判平12.12.27 労判809-82等の判決にも書かれている「労働者の自由な意思に基づく合意」か否かによる点で判断されたと私は思います。

私が労働基準監督署で労働相談員をしていた頃も、求人誌の切り抜きを持参で、「書いてる内容と実際が違う。」と怒りながら相談を受けた事例が多かったりします。

あと労働契約書を「一部」用意して、十分内容説明せずに「みんなサインしてるから」と言って無理矢理署名捺印させ、契約書は労働者には渡さず、「会社のみ」保管すると言う事例も多く目の当たりにしました。

この記事の様な労働トラブルを防ぐためには、どうしたらいいでしょうか?今後は下記のような対処が必要だと思います。

・求人票・求人誌の広告掲載後、面接求人内容について、面接受験者に理解できるよう十分な説明を行う。求人票の内容と異なることが発生した場合は、契約前に十分な説明をし、応じるか否か選択の余地を与える。

・採用面接試験等入社試験後の内定後実際に働く前である入社前に、労働条件通知書だけでなく、労働契約書も交わす。なお署名捺印時には、労働条件内容十分説明をしたうえで、応じるか否か選択の余地を与えたうえで合意する。(説明した当日に合意と署名捺印を強制しない。)

以上の2点を行うだけでも、かなり労働トラブルは防げると私は思います。
なお労働契約書は2部作成し、労働者にも必ず1部渡す必要があります。


もし、求人内容と実際に採用後に働く労働条件が異なっていても、面接時・採用時・労働契約書署名捺印時十分説明を行い、理解を得たうえで選択の余地を与え合意をとれば、記事のような労働トラブルは大幅に減少できると私は思います。

採用試験(面接含む)→内定の流れにおいて、求人票の内容と異なる労働条件で、労使間において合意することもあり得ると思います。重要なのは、過去の判例の通り「労働者の自由な意思に基づく合意」を得たか否かであると私は思います。

実際、面接→採用→最初の給料の支払いまで、労働時間・休日・給料等実際の労働条件をうやむやにして働かせている事例も見受けられます。人手不足の現在は、労使間の信頼関係で成り立っていると思います。労使間の信頼関係の崩壊は、この記事のような裁判沙汰になりかねないと思います。

会社として、今後より良い人材を得たうえで、継続的な雇用を維持するためには、上記の対処法をもとに、早急な改善をして頂ければ幸いです。



※写真は今日の夕食で、4月に友人から頂いた横浜海軍カレー等です。一緒にスペイン産の安い赤ワインと前田のクラッカーで飲みました。

以上、福岡・久留米ぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用・労務管理・労働トラブル対応の町医者 吉野でした。

※お問い合わせや相談したい時は、いつでも下記へ連絡願います。 福岡 久留米 採用と労務管理、労働トラブル対応の町医者 社会保険労務士 吉野正人 移動オフィス 090-2852-9529 (すぐつながります。)
メールアドレス naitya2000@gmail.com

ただし労働者側の相談も可能ですが、当事務所は会社側の相談が得意ですので、ご了承願います。 なお労働者の相談は、下記リンクの社会保険労務士をオススメします。










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