2017年7月17日月曜日

7月17日 最高裁 医師の定額年俸「残業代含まず」の判決から学ぶこと

福岡・久留米のぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用と労務管理の町医者 吉野正人です。
 
7月17日 最高裁 医師の定額年俸「残業代含まず」の判決から学ぶこと

7月17日月曜日。三連休の最終日ですが、残業手当の判決に関する気になる記事がありました。

※毎日新聞より引用

最高裁 医師の定額年俸「残業代含まず」
毎日新聞2017年7月7日 22時07分(最終更新 7月7日 22時07分)

基本給との区別を求める
 残業代込みの医師の定額年俸が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(小貫芳信裁判長)は7日、残業代と基本給を区別できない場合は残業代が支払われたとは言えない」として無効と判断し、2審・東京高裁判決の残業代に関する部分を破棄し、未払い分を計算させるために審理を同高裁に差し戻した。

 1、2審は原告の医師の年俸が1700万円高額な点などから「基本給と区別できないが、残業代も含まれる」としていたが、最高裁は医師のような高い報酬を得ている専門職でも例外は認められず、残業代を分けるべきだと示した。「働き方改革」を巡る今後の議論にも影響を与えそうだ。

 1、2審判決によると、原告は神奈川県内の私立病院に勤務していた40代の男性医師。残業代支給対象が午後9時以降と休日に限定されていたため「未払いの残業代がある」として提訴していた。

 1審・横浜地裁は「医師は労働時間規制の枠を超えた活動が求められ、時間でなく内容が重視される」と指摘し、2審も支持した。

 これに対して最高裁は、労働基準法が残業代に関して使用者に原則25%以上の給与割り増しを義務付けている点を「時間外労働を抑制する目的がある」と指摘。給与の定額払いは違法ではないが、割り増しが行われたかどうか判断するために基本給残業代区別できることが必要だと結論付けた。裁判官4人全員一致の意見。

 病院側の弁護士は「医師の勤務や労働実態を踏まえていない形式的判断だ」とコメントし、医師側の弁護士は「判決が医師の過重労働改善の契機になれば」としている。【伊藤直孝】

最高裁は労基法の原則に戻して判断
 最高裁は従来の複数の判例で、給与の中で基本給残業代を明確に区別することが必要だと示してきた。それにもかかわらず残業代を巡る労使紛争が絶えないのは、使用者側が「この職種は例外だ」と主張して争うためだ。今回の裁判でも、病院側は「医師は労働と研究の時間を区別することが不可能」と主張。労基法の労働時間規制を適用することは不合理だと訴えていた。

 水町勇一郎東大教授(労働法)は「1、2審は『高い報酬を支払えば残業代の区別は必要ない』としたが、最高裁は労基法の原則に戻して判断した。勤務医は実際には裁量がない人が多く、労基法の保護が必要。妥当な判断だ」と見る。

 最高裁判決は、残業代の区別が不明確な給与の支払いは、ほぼ例外なく認められないとの立場を鮮明にし、労基法の原則を順守するよう改めて使用者に求めた。今後、報酬の多寡に関わらず、労使の残業代を巡る訴訟に影響を与えていくとみられる。【伊藤直孝】

※引用終わり。

記事に書かれている今回の判決は、非常に重要だと私も思います。今後、労務管理及び給料計算、賃金制度見直しにおいても、実務的に非常に重要な判決だと思います。今回の記事を教訓に、今後は基本給年棒残業手当が含んでいる旨の対応は、「不可能」であると私は思います。もう残業手当においては、グレーな対応・曖昧な対応は非常に難しいと思います。

なお私を含む社会保険労務士より、「定額残業手当」と言う方法を顧問先の経営者・人事担当者へ助言・指導することがあります。「定額残業手当」とは、簡単に言う「1月当りの残業手当」を例えば「30時間分〇〇円」と毎月決めて支払う方法です。毎月一定額残業手当を、残業するしないに関わらず、支払う方法です。

この定額残業手当について、年棒や歩合、基本給に含ませたりすることは、今回の判決で不可能であると思われます。今後、給料支払い時には、給与明細・賃金台帳にて基本給や各手当とは別に「定額残業手当(○時間分)」と明示する必要があります。

また決めた残業時間より実際の残業時間が超えた場合は、超えた分残業手当を計算し、支払う必要があります。よく定額残業手当を既に払っているので、いくら残業しても追加で払う必要が無いと勘違いされている経営者及び人事担当者さんがいらっしゃいますが、労働基準法違反となります。

今後は、定額残業手当を導入する場合は、下記の対処が必要だと思います。
1 就業規則、賃金規程を改訂。定額残業手当を導入する趣旨、方法等を明記する。
2 定額残業手当を導入する全従業員に対し、賃金改定同意書又は労働契約書を署名・捺印のうえ交わす。
3 給料明細・賃金台帳においては、基本給と定額残業手当は別項目で定め、定額残業手当については、金額何時間分であるか?を必ず明示する。

以上のような対処が必要だと思います。なお定額(固定)残業方式は、下記のような「なじむ職種」「なじまない職種」があるので、使い分ける必要があります。

 (なじむ職種)
・ 飲食店の店長  ・管理職(管理監督者は除く) ・営業マン ・配達配送 
・システムエンジニア ・企画 ・編集 ・設計 ・デザインなど

 (なじまない職種)
・製造業、建設業の現場作業 ・事務職(補助的な仕事)・トラックやタクシー、バスのドライバー ・時給制のパートタイマー など

今回の判決をもとに、残業手当支払いの改善につなげていただければ幸いです。ちなみに定額残業手当は、労務管理的に「諸刃の剣」であり、職種だけでなく、会社・職場によって向き不向きがあります。なお、不明な点は私を含む社会保険労務士に相談して頂ければ幸いです。


※写真は先日の夕食で、ピーマンの肉詰め・肉じゃが・味噌汁等です。

以上、福岡・久留米ぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用・労務管理・労働トラブル対応の町医者 吉野でした。

※お問い合わせや相談したい時は、いつでも下記へ連絡願います。 福岡 久留米 採用と労務管理、労働トラブル対応の町医者 社会保険労務士 吉野正人 移動オフィス 090-2852-9529 (すぐつながります。)
メールアドレス naitya2000@gmail.com

ただし労働者側の相談も可能ですが、当事務所は会社側の相談が得意ですので、ご了承願います。 なお労働者の相談は、下記リンクの社会保険労務士をオススメします。








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