2018年5月10日木曜日

5月10日 建設業における移動時間と労働時間について

福岡・久留米のぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用と労務管理の町医者 吉野正人です。
 
5月10日 建設業における移動時間と労働時間について

5月10日木曜日。今日は、建設業における移動時間は、労働時間なのか?と言う事について書きたいと思います。

建設業においては、会社事務所から建設現場まで遠い場合が多いと思います。場合によっては、車で片道2~3時間以上と言う場合も多く見かけます。車での移動の場合、運転する方は、運転する事が「キツイ」と感じる方も多いと思います。なので、顧問先から移動時間は、労働時間なのか?」と言う相談も多かったりします。

会社事務所から現場への移動時間に関しては、下記のとおりに考えるのが良いと思います。

・会社事務所・事務所駐車場にて「点呼・朝礼・事前積み込み作業等」をした後、車で移動した場合
会社事務所~現場まで車での移動時間は、労働時間である。

・自宅から直行又は会社駐車場から点呼等もなく、(任意に)車で移動した場合→現場の始業時間から労働時間であり、車での移動時間労働時間ではない

・現場で作業後、車で事務所に戻り、事務所で「片付け作業・点呼、夕礼等」をした後終業し、退社→現場から事務所での終業まで労働時間である。移動時間は、労働時間である。

・現場で作業後、(任意に)車で移動して自宅に直帰。→現場終業時間までが、労働時間である。移動時間は、労働時間ではない。

となります。実は移動時間は、労働時間か否か?について、私が知っている限りの労働基準法に関する専門書等には、明確な法律・政令・省令・通達等根拠が記載されているのを未だ見つけきれていません。。。昔、労働基準監督署にて労働相談員時代に相談員・労働基準監督官と論議して落ち着いた結論が、上記の通りだったりします。

根拠となる判例は、下記のとおりとなります。

※判例を引用
裁判例① 総設事件 東京地裁 平20.2.22判決 労働判例966号51頁
下記の理由で、事務所集合後の準備時間や、現場までの移動時間、現場から事務所までの移動時間、事務所に戻った後の道具の洗浄等をしている時間についてを使用者の指揮命令下に置かれている労働時間として認めた。
・朝に事務所へ午前6時50分には来ることを使用者から実質的に指導されていた
・直行の場合を除いて少なくとも午前6時50分以降は使用者の作業上の指揮監督下にあるか、使用者の明示又は黙示の指示により業務に従事していたものと考えられる
・車両による移動時間は、拘束時間のうちの自由時間とは言えず実働時間に含めて考えられるべきものである
・現場での作業を終えたに事務所へ戻ることも原則化していた
・事務所に戻った後は、使用者からの黙示の指示により道具の洗浄等の業務に従事していたものと考えられる

裁判例② 阿由葉工務店事件 東京地裁 平14.11.15判決 労働判例836号148頁
会社事務所と現場との往復は、通勤としての性格を多分に有するものであり、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている労働時間には当たらないと判断した。
・出勤の際、会社事務所に立ち寄り、車両により単独または複数で現場に向かっていた
・車両による移動は会社が命じたものではなく、車両運転者、集合時刻等も移動者の間で任意に定められていた
・当日の作業内容については前日までに決まっていたことが多く、改めて会社事務所において指示されず、その必要もなかった

※引用終わり。

なお就業規則に、「移動時間は、社用車を運転する者は労働時間であり、同乗者は労働時間ではない。」と明記すれば問題ないと言う考えもあります。

しかし、下記最高裁の判例により、就業規則で定めれば大丈夫と言う考えは危ないと思います。

※判例引用

三菱重工業長崎造船所事件(最一小判平12.3.9)
労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。
労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。

※引用終わり。

結局は、就業の「実態」で判断するのが最高裁の判例から明らかだと思います。したがって、長時間労働時間を抑えるならば、下記の対処が有効だと思います。

直行直帰のうえ作業開始時・作業終了時にメール・電話等で始業時間・就業時間の連絡を受ける。

・労働時間記録は、タイムカードの場合は打刻できないので、連絡を貰った時に手書き記入し、後日従業員本人から記入箇所に捺印を貰う。

時間記入式出勤簿の場合は、連絡を貰った時に記入し、後日従業員本人から記入箇所に捺印を貰う。

以上の方法で書面記録をしっかり残し、労働時間管理する事をお薦めします。


※写真は、先日の夕食で、回鍋肉・クリームシチュー等です。

以上、福岡・久留米ぶっちゃけ社労士(主に会社側の視点で、労使間の建設的な信頼関係構築を目指し、企業の継続・繁栄のお手伝いをする、ぶっちゃけた相談ができる社労士)こと採用・労務管理・労働トラブル対応の町医者 吉野でした。

※お問い合わせや相談したい時は、いつでも下記へ連絡願います。 福岡 久留米 採用と労務管理、労働トラブル対応の町医者 社会保険労務士 吉野正人 移動オフィス 090-2852-9529 (すぐつながります。)
メールアドレス naitya2000@gmail.com

ただし労働者側の相談も可能ですが、当事務所は会社側の相談が得意ですので、ご了承願います。 なお労働者の相談は、下記リンクの社会保険労務士をオススメします。







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